令和5年8月末日締めの秋の句の選です。
投句は10名、32句でした。
3名の選者が3句ずつ選びました。
入選句(敬称略)
梶田高清選
<1席>
過疎となり深まるばかり虫の闇 禮
(選評)過疎になって行く寂しさを上手に虫に委ねた。人が少なくなると、闇は虫の音が深まるばかりである。良き日本の田舎の景色の減少を嘆いている。
<2席>
茶屋街の華奢な格子戸風爽やか 千草
(選評)花街をも想像した。一時期は賑わっていたのであろう。華奢な格子戸の向こうは閑散と風が通り抜けている。秋の少し寂しさを感じる心地良い爽やかな風である。
<3席>
蚯蚓鳴く跳ねっ返りの朝帰り 花らっきょ
(選評)跳ねっ返りとは娘さんであろうか。
鳴くはずの無い、蚯蚓まで鳴かせてしまう親心。身につまされる。
藤本公子選
<1席>
お互ひの窓辺にそれだけの良夜 さくらさくら
(選評)長い間連れ添って、言葉や説明もいらず月を愛でているご夫婦かと。
「それぞれの良夜」が年季の入ったご夫婦を思い浮かべます。月を愛でながら自分たちをいとおしんでいるようです。
<2席>
塞がれて古墳露けくありにけり 幸子
(選評)宮内庁管轄なので、常に禁足地の古墳ですが、塞がれている錠を見ると、なお、露けく感じられたのです。
<3席>
撫子やエコー写真の小さき子宮 厨子茅花
(選評)エコー写真で見る子宮が、こんなに小さいのかという驚きです。こんな小さい子宮で命を育んでいくのだという感慨。
季語が動くかもしれませんが、この句の場合は女の子を宿しているのかなぁと想像します。
米澤悦子選
<1席>
毬栗や育児嚢ありウォンバット 上田崇佳
(選評)取り合わせの句ですが、丸い毬栗の中で大切に実を育んでいることと、有袋動物のウォンバットの組み合わせが絶妙。
<2席>
一言が災ひとなりそぞろ寒 山口廣世
(選評)何げないひとことが、波紋となる事もあり、「口は禍の門」と昔から言われる。
<3席>
秋の蚊の小さきにかくも悩まさる 花らっきょ
(選評)今年は夏より涼しくなってきてからの方が、蚊が多くなったように思う。刺されても痒くならなければ良いが、痒さがたまらない。
投句及び選句のご協力、ありがとうございました。
引き続き、「冬の句」を募集中です。>>WEB投句箱