令和6年10月末日締めの秋の句の選です。
投句は43句でした。
3名の選者が3句ずつ選びました。
入選句(敬称略)
堀江信彦選
<1席>
月今宵幾度も夫呼びよせて 花らっきょ
「月今宵」ならばこその景。その都度従う夫が居て、円満にー。今年はとりわけスーパームーンでした。
<2席>
百幹をぬふ風青し竹の春 中山隆行
竹林を抜ける風を「青し」と詠んだ。親竹も若竹もひときわ緑の色を濃くする竹の春である。
<3席>
糸瓜水貞子が肌の肌理と艶 花らっきょ
日本の代表的なホラー『貞子』。その貞子に糸瓜水を使わせた妙。うすら寒ささえ覚える。
小野義倫選
<1席>
鶏頭や母の憂ひは火傷の子 ここ
上五の「鶏頭や」が中七、下五の文言にぴったりとあっています。
<2席>
流木に埋もる遺品秋出水 中山隆行
能登の生々しい景を「埋もる遺品」と表現したのがうまいと思います。
<3席>
山里の煙一筋秋収め さくらさくら
山峡の静かな景を中七で単純に表現したのがよかった。
三谷啓子選
<1席>
カクテルに潤む港の名残り月 幸織奈
この句の場合、名残り月は陰暦九月十三夜の月で、どこかもの寂びた趣がある。名月でなく名残りの月で、心地よい宴の後の余情が深められている。
<2席>
百幹をぬふ風青し竹の春 中山 隆行
竹の子を地上に出し、生気を失った親竹が秋になると元気を回復し青々と葉を茂らせる。竹の春である。百幹、風青しと端的な表現で竹林の音、匂い、空気が想像される。
<3席>
担がれて帰る家あり捨て案山子 蓑虫
あけくれ風雨に耐え働いてくれた案山子を労っているような、ほのぼのとしたあたたかさが感じられる句。家族の一員のように担がれて帰る家があるのは、捨て案山子ではないかもしれませんが。
投句及び選句のご協力、ありがとうございました。
引き続き、「冬の句」を募集中です。>>WEB投句箱